読めない小説 無観客劇場 2018年10月5日 学校の先生が「世の中には二種類の人間がいる。それは作る人と使う人だ」と言っていた。 作る理系と使う文系、昔はこんなことが言われていたらしい。 今では劇場は増えて踊り子も増えて振付師も一流となり、量と質は格段に高まった。 けど、今足りないのは「見る人」の存在なんじゃないか。 「見てみたい」人がいなければ成立しない。 ... 間久部緑郎
読めない小説 ギャングスターに憧れたのだ 2018年10月4日 息も絶え絶え、精魂尽き果てた男が草むらに倒れ込んだ。 「ここに手傷を負った男が通らなかったか?」追跡者がジョルノに尋ねた。 「あちらに行きました」ジョルノは即座に答えた。 その時かすかな声で男が何かを呟いて以来、街はジョルノにとって天動説となった。 男は「感謝」と「敬意」を示したのだ! 決して恵まれているとは言い難い... 間久部緑郎
読めない小説 過去から迫る恐怖 2018年10月4日 「恐怖は過去からやって来る」のであれば、過去が無ければ恐怖は存在しないとも言える。 では、記憶を持つ人間は必ず恐怖を覚えるのだろうか。 答えはノーだ。 彼女、コードネームSM-046は怖がらない。 脈拍は至って健全、何をしても何をされても緩やかだ。 ・・・何をしてもされても。 恐怖を感じない彼女に恐怖を感じる人間が... 間久部緑郎
読めない小説 夢を忘れていた古い地球人たち 2018年10月4日 「地球は青かった」宇宙飛行士ガガーリンは語った。 1960年代、人類は「上に」何があるのかを確かめた。 「次は下だ」誰かがそんなことを呟いた。 あれから100年が経過した今日は、エベレストをひっくり返してもなお、底が見えないマリアナ海溝に初めて光が射した日である! しかし帰還した乗務員エデンは斜め左上を見ながら語る。... 間久部緑郎
読めない小説 夢の所有権 2018年10月4日 誰にでも夢の中で幸せを感じた経験があると思う。 人は死ぬ時、生きていた時に深く心に刻んだ記憶が次々と浮かぶという。 夢と記憶から感情を抜いたらどうなるんだろう。 「あなたの目に見えてる世界とアタシの目に見えてる世界はまったく違うものなのかもね」 夢の中で、声を聞いた。「この夢はわたしなの?」少女は考えた。 やがて作... 間久部緑郎
読めない小説 「この物体には時間が流れていないようだ」 2018年10月4日 「いつか2人が同じテーブルで食事をするという夢がある」 1人の男が愛のために亡くなった。 その墓標には国民の約4割が足を運んだという。 「死んだ者を生き返らせる……今まで何人の人が、望んだ事だろうね」朦朧とした意識の中、男はやさしい笑顔で囁いた。 この男はかつて賢者と呼ばれていた。 だが、すでに時間を忘れている。 ... 間久部緑郎
読めない小説 昆虫汚染区域 2018年10月3日 世界から「隔離された国」がある。 そこは文化を捨てた国だ。 今や文化の発展はリサイクルの限界を越えて地球を汚染していた。 パイロットのジンネマンは言った。「人間も自然の産物だとすれば、人の生み出すゴミもまた自然の産物と言えるだろう」と。 誰もが想像したくなかった出来事だが・・・遂に地球は臨界点を迎えた。 瞬く間に土は... 間久部緑郎
読めない小説 電子マネーの虎 2018年10月3日 「金が実在することに価値はあるのか?」 1970年代、通信インフラ会社に務める室井は金の存在価値について考えていた。 思考を重ねた結果「金を電子化すること」を夢見て一念発起の企業を志した。 すると外資系企業数社が協力してくれることとなり、資金から営業から万全なバックアップ体制が用意された。 やがて事業は2年で上場を果... 間久部緑郎
読めない小説 腐らない身体 2018年10月2日 ある日買い物から戻った時、ふいに親戚が訪ねてきた。 外科医の沢村は買い物袋を棚の上に置いたまま、その存在を忘れてしまった。 14年後、引っ越しを迎えた時、そこに買い物袋は置いてあった。 中身は新品同様のチーズバーガーだ・・・ 男は震えた。 「アメリカでは低所得層ほど肥満体型が多い」沢村はこの統計を見た瞬間、なぜか世... 間久部緑郎
読めない小説 若者の反撃 2018年10月2日 失業率30%、加えて財閥系企業に入らねば人でないとまで報道された国がある。 就職でその後の80年が決まる。 未来を憂いた一人の若者は、SNSでアナグラムの奇妙なメモを投稿した後、宣言通りの投身自殺を実行した。 すると一人また一人と、呼応した若者が次々に投身自殺を図る・・・同じメモを残して。 奴隷の国が奉仕を怠れば消費... 間久部緑郎