最終兵器と呼ばれた男

【結論】

・子どもの才能に過度な期待をしてはいけない

「○○家の最終兵器」と呼ばれている逸材がいる。

 

周囲からは、

「生まれた時からサッカーが上手かった」

と言われるような存在だ。

 

そんなMが最終兵器と呼ばれるのには複雑な背景がある。

 

実は、Mは三兄弟の末っ子だ。

三兄弟全員サッカーをしており、いわゆる遠藤のような。。。

 

長男が初めてサッカーを始めた時、そのセンスの高さに度肝を抜かれた。

こいつは出来る、一目でそう感じた。

 

そして次男、最高の逸材だと思った。

傍目から見てもブロックでナンバーワンのパスセンスだった。

味方を使いながらエリアに侵入していく術を生まれながらに身に付けている。

 

「これが天才か・・・」

と思わず物思いに耽るような選手だった。

 

しかしそんなある時、その次男が移籍をしたいと言い出した。

小学3年生の頃だ。

 

それは本人の意思なのか・・・?

周囲には衝撃が走る。

 

どうやら違う、親の意向だった。

 

悪く言えば、欲目が出たのかも知れない。

低学年にとって、親は否定できない存在であり、

嫌われたくない人間、不動のナンバーワンだ。

 

親が○○へ移籍をしろと言ったから。

理由はそれだけ。

 

だが、移籍先がそれに条件を突きつけた。

「移籍してもいいが、公式戦は一切出場させない」

 

なぜそんなことを言ったのか、その詳しい理由は大人の事情で言えないけど、、、

客観的に見る必要もないくらいこれは大きな障害となるはずだった。

プレゴールデンエイジに公式戦出場が出来ないとか一ミリも笑えない冗談みたいな条件なんだから。

 

合理的に考えて移籍は諦めるだろう。

冷静になるはずだ、どこかで目が覚めるはずだ。

そんなことを確信していた。

 

「お世話になりました。移籍します」

 

しばらくして、簡素な連絡がやってきた。

どうしてこうなった。どうしてこうなった。

 

「口ではああ言ってもそのうち出場させたくなるだろう…」

おそらく頭の中でそんな思考が巡ったのではないかと思う。

 

事実、30以上の幼稚園からボスが集結するクラブチームの中でもその才能は光り輝いたそうで、

瞬く間に傑出した存在感を見せたと聞いている。

 

それから1年が過ぎて、、、

そして2年が過ぎて、、、

6年生になった。

 

結論、現実はそんなに甘くなかった。

その移籍先のクラブは義理と人情に熱いクラブだった。

 

約束通り、彼は公式戦に一切出場していなかった。

 

練習試合ではスタメン、なぜか公式戦にはいない。

敵チームからはさぞ不思議な存在だっただろうに。

 

彼はその後、ジュニアユースに上がり、実に三年振りに公式戦出場を経験する。。。

 

そんな時、1つの知らせが届いた。

「おい、あの三兄弟の末っ子が幼稚園のサッカーに顔を出し始めたぞ、、、しかも左利きだ」

 

計算からすると、、、

そうか、3年の移籍の時か。

あの時、すべての布石は打ってあったのか。。。

 

おれはしばらく幼稚園サッカーから離れていたので全く知らなかった。

 

長男次男が右利きに対して、末っ子は左利きで足も一番早い。

 

「そいつは生まれた時から上手かったらしいぞ」

「ホントかよ?」

 

見た。マジだった。震えた。

 

だけど、さらに驚いたのは、そいつと対等に張り合うライバルが同じ幼稚園にいたという事だ。

学年男女合計40人にも満たないその小さな幼稚園で、、、

本当に、運命というかそういうことを信じたくなってくる。

 

最終兵器は今、天才と呼ばれ活躍している。

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